Tokyo Document Recovery Assistance Force
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2011年6月22日水曜日

紙を安全に洗うためのクリーニング・ポケット法、東日本大震災での被災資料復旧に特許を無償提供


 

紙を洗う—これは紙資料の保存修復処置における最も重要な処置の一つである。変色や染みなどが軽減されるほか、経年や利用によって紙の中に生成され、それ自体が劣化の原因にもなる水溶性の酸性物質が流れ出る。また、乾燥時に新たな水素結合が生じることで、紙の強度が戻るなどの効果もある。紙の「洗濯」は、紙の見た目を綺麗にするばかりでなく、紙の劣化に関わる根本的な問題への対処とも言える。

このように、洗浄は様々な利点を有しているが、処置におけるリスクもある。その一つとして、水を含んだ紙は極端に強度が低下し、不用意に扱うと破れや歪みが生じてしまうことが挙げられる。そこで、洗浄を行う場合、資料をポリエステルやセルロース系の不織布、またはナイロン製のネットなどのサポート材に挟んで処置するのが一般的である。しかし、この方法を用いたとしても、資料を安心して洗浄できるほどしっかりとした保護にはならず、取り扱いには細心の注意を払う必要がある。また、酸性劣化やカビの影響で紙力が著しく低下した紙や、図面・ポスターなどの大型資料に対しては、取り扱いの難しさから、洗浄処置を行えないこともあった。

上記の問題を解決し、安全かつ効果的な洗浄方法を実現するため、東京文書救援隊のメンバーである株式会社資料保存器材では「クリーニング・ポケット法」を開発し特許を得ている(特許第4721042号)。上記の写真のように、大量の紙媒体の汚れを、水中で「洗濯」するように、安全に除去することができる。この特許を、今回の東文救の活動のために、非営利目的での使用であれば、クレジットを明示する条件で、無償提供することにした。公的機関における使用は勿論のこと、今回の東日本大震災によって津波などの被害を受けた被災資料のうち、この方法が適用可能なものには、洗浄法の一つとして有効活用していただきたい。詳細は以下に。