大船渡への導入は、すでに現地での写真資料の復旧に注力してきた紙本修復家の金野聡子さんが受け皿となってくれたことで極めて順調にすすみ、システムの設営と臨時職員の方々へのスキル・トレーニングは半日で終了、稼働を開始しました。なお、乾燥工程で使用するコルゲート・ボードについては、特種紙商事株式会社よりアーカイバルボード200枚をご寄贈いただきました。
当日、日経新聞が取材し15日に本紙に掲載されました。それによると「紙の文書は写真より破れ易いため、洗浄・修復には慎重さが必要」、「(専門家の金野さんでも)1日30枚が限度だった。今後は市から派遣された臨時職員7人とともに、1日約200枚のペースで作業を進められるようになる」としています。
職員の方々へのシステムの説明、HEPAフィルターを組み込んだドライ・
クリーニングから洗浄、乾燥までの一連の工程を実演、指導した。
宮城資料保全ネットワークでは、事務局中央の長テーブルにシステムを設営した後に、事務局の主要スタッフの皆さん、岩沼市教育委員会の伊藤大介さん、神戸の史料ネットの松下正和さんらにスキル・トレーニングをしました。
トレーニングに当たっては東文救を支援してくれる国立公文書館の修復係の田川奈美子さんと佐々木芙由実さんがチューターを引き受け、指導にあたりました。今回の実技で対象とした資料には製本された文書が含まれており、その解体と、乾燥後の再製本の方法も田川さんらが伝授しました。
宮城ネットのスタッフからは「塩を含んだ資料は洗わねばと思いながらも、濡れた資料を傷めないように扱うのはとても大変だと思っていた。網や不織布を使うこの方法ならば、専門家でもなくともできる」。「綴じを外したり製本するのを自分でやることに自信ができた」という声が。自分の選んだ資料数枚をドライクリーニングから洗浄、乾燥にかけて2時間後に取り出したスタッフからは歓声が上がりました。
実際の被災資料を相手に復旧処置をする宮城ネット等のスタッフの皆さん。
折状の折が残るような乾燥とフラットニングの柔らかい仕上がりに満足と。