Tokyo Document Recovery Assistance Force
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2011年8月30日火曜日

群馬県立文書館の被災公文書救済活動で東文救文書復旧システムが活用されています

群馬県立文書館が実施している被災公文書救助活動に、東文救の文書復旧システムが導入されています。同館は、早期から被災地の文書救済活動に取り組んだ施設の一つです。その一環として6月の半ばに宮城県女川町役場の被災文書を預かり、復旧作業を行ってきました。対象資料は、明治から平成までの税務課・町民課の簿冊など約300点。移管当初はかなり濡れているものもあったそうです。その後、国文学研究資料館が釜石市役所で実施した文書救助活動を参考にしながら、およそ15名の職員でキッチンペーパーによる吸水作業を繰り返し、7月中には全ての資料の乾燥が終了。現在は、ドライ・クリーニングと綴じ直しの作業を行っています。


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群馬県立文書館に移管された女川町役場の被災文書。
乾燥作業は終了し、現在はドライ・クリーニングや綴じ直しを行っている。


東京文書救援隊としては7月13日に群馬県立文書館を訪問し、資料の状態や作業場を拝見するとともに、東文救の文書復旧システムを紹介しました。館での検討を重ねた後、8月1日に、同館の職員2名が復旧システムの視察とスキル・トレーニングのために工房へ来社。お二人は実際にシステムを使用したり、救援隊スタッフから簡易的な製本方法の指導を受けました。その後、女川町の被災文書への適用の可能性を協議した結果、一部の資料に対し復旧システムを使用することに。救援隊からは濾紙や不織布などの資材を提供しました。


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工房で復旧システムの指導を受ける、群馬県立文書館職員の方々。
フローティング・ボード法による洗浄や、簡易的な製本方法を入念に確認していました。


工房でのスキル・トレーニングの後、システムに関するサポートは電話やメールで対応していましたが、やはり実際の作業現場を拝見したほうが良いということになり、8月24日に救援隊スタッフが同館を訪問。作業場には、東文救のシステムを基に、職員の方々が段ボール箱などを転用して作ったドライ・クリーニングBOXやエア・ストリーミング乾燥設備などが設置されていました。多少の道具の違いはありましたが、いずれも作業するには申し分ないものでした。実際の洗浄・乾燥処理についても、職員の方々が事前に東文救のマニュアルを読み込んでいたことや、工房でのスキル・トレーニングが功を奏し、危なげ無く作業していました。また、処理後の資料の綴じ直しの一部にも、救援隊スタッフが指導した簡易的な製本方法が採用されています。当日、救援隊としては、機材への細かいアドバイスと、薄い資料の洗浄・乾燥方法を実演・指導しました。


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自分たちで作成した復旧システムで作業をする群馬県立文書館の皆さん。職員の中には
普段から修補業務に携わっている方もいるため、刷毛の扱いなども手馴れた様子でした。


群馬県立文書館で行っている被災文書救助活動は9月中に終了し、女川町に返還される予定。期日の関係から、全ての資料を洗浄することは断念し、表紙や特に汚れの酷い資料にのみ適用することになりました。ただし、今後洗浄を行う必要が生じた場合に備え、女川町へ資料を返還する際、東文救の文書復旧システムも引き継ぎたいとのことです。

被災文化財等救援委員会「海水で濡れた資料の殺菌燻蒸による発がん性物質等発生のリスクの調査結果について」

東北地方太平洋沖地震被災文化財等救援委員会は29日、石崎武志事務局長名で被災県教育委員会文化財課及び関係団体に対し「海水で濡れた資料を殺菌燻蒸することによる発がん性物質等のリスクの調査結果について」を公表した。

これは7月22日付で公表した文書「海水で濡れた資料を殺菌燻蒸することによる発がん性物質発生のリスクについて」に続くもので、その後の検討結果の報告になる。

救援委員会では海水に浸水した紙などをサンプルにして燻蒸による生成物質の調査をした。酸化エチレンと酸化プロピレンとで乾いたものと濡れたものとを燻蒸し、生成物質(クロロヒドリン類、グリコール類)の分析をした結果、生成物質は乾いた状態でより少ない傾向が認められたとしている。酸化エチレンについては医療関係のガス滅菌の残留限度値に、また酸化プロピレンについては残留限度値が無いことから酸化エチレンでの値を参考にした。

いずれのガスの場合も、事前に資料を十分に乾かすことで、大きな問題はないとしているものの、どうしても必要と判断される場合に実施するのが望ましいとしている。

なお、医療関係でのガス滅菌の残留限度値も、生成物質の多寡についての数値も、この文書の中では触れられていない。



2011年8月22日月曜日

大船渡市へのシステム活用の様子が金野聡子さんのブログで紹介されました

大船渡市の福祉協議会YSセンターに導入された東文救文書復旧システムの活用の様子が、同地で救助事業の中心になって活躍している金野聡子さんのブログに紹介されました。 「ドライクリーニングからフラットニングまでの流れに無駄がなく本当に素晴らしいシステムです!」と。


Paper Deep (2011/08/19)「東文救復旧システム」 


2011年8月19日金曜日

遠野文化研究センターへの東文救文書復旧システム導入報告

東文救の文書復旧システムが8月2、3日に岩手県遠野市の遠野文化研究センターに導入され、着々と復旧作業が進んでいます。


同センターは、震災直後から三陸地方における被災地支援の拠点となり、三陸文化復興プロジェクトとして、被災した公立図書館や学校図書館を支援するための献本活動などを実施されています。また、5月には大槌町や陸前高田市など、津波による甚大な被害を受けた地域に職員が入り、様々な文化財の救助活動も行われたとのことです。その一環として、大槌町立図書館の文書類や、地方紙の新聞スクラップ・ブック、郷土資料(図書)などを救出し、6月の半ばから、小笠原同センター事務局長の指揮のもと、資料の乾燥作業に取り組まれてきました。しかし、作業当初から海水に浸かった資料をそのまま乾燥させることへの不安や、塩のベタつき、異臭などの問題をどうするか苦慮していたとのことです。そこへ、東京文書救援隊が視察へ赴き、文書復旧システムの適用を提案、直ぐさま、システムの導入が決まりました。



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大槌町立図書館から救出した資料。当初は風乾やキッチンペーパー、
布団圧縮袋を使用した水切り・乾燥作業が行われていた。



協議の末、東文救文書復旧システムをはじめに用いることになったのは、明治20年代~昭和20年代までの議会記録、および昭和8年の大津波に関連した資料など全158冊。厚みや質感が様々な和紙・パルプ紙に墨やインク、スタンプなど多様な書写材料が使われていました。これまでの水切り、乾燥作業により、大半の資料はほとんど乾いていましたが、総じて塩のベタつきが残っており、泥汚れやカビが酷いものもありました。また、一部の資料は海水でインクが滲んでいたり、ほとんど流れているものもありましたが、いずれもシステムで処理が可能なものでした。



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明治20年代から昭和20年代までの大槌町の議会記録など。泥汚れ、カビなどが見られ、
インクが流れているものもある。 また、海水の影響で、紙がベタつきが生じている。



2日間のスキル・トレーニングには、遠野文化研究センターや市立博物館をはじめとする遠野市役所の職員や、学生ボランティアなど、延べ20名近くの参加者が集まりました。トレーニングにあたっては、国立公文書館修復係の阿久津智広さんと田川奈美子さんが中心となり、参加者に対し、丁寧な指導を行いました。はじめは、非常に薄い資料の取り扱いなどに苦戦を強いられ、思うようなペースで作業が進まなかったものの、トレーニング開始から2時間ほどで参加者の方々もかなり慣れた様子に。初日は、2時間の作業(平均4~5名)で40枚の処理に留まりましたが、2日目は順調なペースで進行し、4時間の作業で110枚の資料を処理することができました。乾燥後に取り出された資料は塩のベタつきが取れ、異臭も大幅に軽減されており、その仕上がりの良さに歓声が上がるほどでした。後日、同センターの川合さんからは、『これまでスクウェルチ・パッキング法(真空パック吸水法)を行っていましたが、私たちの技術では、これ以上作業を進める自信がなく、脱塩や泥の臭いが気になっていた。そういったなか、東京文書救援隊の全面的なバックアップでシステムを導入、スタッフの方の丁寧な指導により、資料の異臭も無くなり、紙本来のサラッとした手触りを取り戻すことができ、大変な効果が実感できた。』というお誉めの言葉をいただきました。



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国立公文書館の阿久津さん、田川さんの実演後、実際の被災資料に復旧処置をする遠野文化研究
センターの皆さん。処理後の資料は塩のベタつきが取れ、サラッとした仕上がりに皆さんが満足された。



現在は更にペースが上がり、1日に200枚以上の資料を処理できる日もあるそうです。今後は、作業人数を増やし処理量を増やしていきたいとのことです。また、救援隊としてもシステムの効率化を図り、現地の皆様に還元したいと思っています。

2011年8月15日月曜日

7、8月の活動報告と今後の予定

既報のように、7月中旬に大船渡と宮城史料ネットへの東文救システム導入が行われました。また、被災地の文書等を引き受けて復旧に取り組んでいる関東圏内の2つの機関を訪問し、東文救システムの紹介をしました。このうち一機関からは、当方への見学と実習が行われ、当方から現場でのトライアル用資材が提供されました。

今月(8月)2, 3日は遠野文化センターでシステム導入とスキル・トレーニングが行われました。これには、先月に続き、国立公文書館から公務で職員を派遣いただき、スキル・トレーニングのチューターをして頂きました。また8日には、安江明夫代表が国立公文書館の高山正也館長と懇談、改めて相互の協力を確認しました。

公益社団法人企業メセナ協議会の東日本大震災 芸術・文化による復興支援ファンドへ申請していた助成が5日に決まりました。これは来月(9月)5, 6日に予定している石巻文化センターの被災資料復旧に使わせていただきます。

来月(9月)は上旬から複数の被災地を訪問し、システム導入のための事前調査を、その後に石巻でのシステム導入とスキル・トレーニングを行います。

以上とは別に、8月29日に大学図書館問題研究会大会で9月13日に全史料協関東部会例会で、10月14日に全国図書館大会資料保存分科会で、11月は二箇所の文書館・公文書館で、それぞれ東文救の活動報告を行うことになっています。

また、東文救としての活動を開始した6月には予期しなかった動きが、7月半ばから周辺で起こりつつあり、これらへの東文救としての姿勢をはっきりさせることが必要と判断して、東文救内で検討の上、8月12日付けブログで「システム利用についての条件」を明らかにしました。東文救はノーサイドで、必要とされるところへは別け隔てなく支援をするに吝かではありませんし、システムも広く無償公開しているのですが、その利用にあたっては良識と信義を元に行っていただきたいのです。


遠野文化研究センター様からシステム導入とトレーニングについてお礼状をいただきました

8月2、3日に岩手県遠野市の遠野文化研究センターで東文救文書復旧システムの設営とスキル・トレーニングが行われました。そのお礼状をこのほど頂戴しました。ありがとうございます。三陸の文化復興になにほどかのお役に立てたならば幸いです。



9月の全史料協関東部会で「被災資料を復旧する--東京文書救援隊の考え方と技術」として講演と実演をします

9月13日(火)に開催される全国歴史資料保存利用機関連絡協議会(全史料協)関東部会第263回定例研究会で、「被災資料を復旧する--東京文書救援隊の考え方と技術」として講演と実演を行います。詳細な案内は下記に。

開催案内のPDF は→ こちら



2011年8月12日金曜日

企業メセナ協議会様からの助成が決まりました。石巻文化センターの被災文書復旧に使わせていただきます。

公益社団法人企業メセナ協議会様に対して東京文書救援隊がかねて申請していた「被災文化祭(文書等)の復旧支援」のための助成が決定し、8月5日に助成決定通知書が届きました。

助成金額は465,000円。9月上旬に予定している石巻文化センター(宮城県石巻市)の被災文書復旧のための東文救システム設置と、現地でのスキル・トレーニングに使わせていただきます。





公益社団法人企業メセナ協議会の東日本大震災 芸術・文化による復興支援ファンド特設サイトは→こちら




「被災した文書の復旧処置システム・マニュアル」の前文にシステム利用についての「条件」を書き加えました

7月6日付で当ブロクに発表した「被災した文書の復旧処置システム・マニュアル」の前文に、システムの利用についての「条件」を以下のように書き加えました。新たに書き加えた箇所は、「なお、導入にあたっては」から「良識と信義ある活用をお願いしたい。」までです。


津波により汚泥や塩水を被った資料は、被災現場から緊急避難が行われ、カビの発生や拡大を防ぐために乾燥まで持ち込めたとしても、現物としてそのまま利用に供することは難しいものが大半である。これらの資料のうち、現物として「かけがえのないもの」については、物理的に泥を除去し、真水で汚れや塩分を洗い、乾燥させ、フラットにする必要がある。ここで紹介する東文救復旧処置法は、資料の解体から始まり、最後の乾燥・フラットニングにいたるまでの一連の工程をシステム化したものである。どこにでも手に入る機材を用い、専門家ではない方々でも資料を傷めることなく、効率的に復旧作業に従事できることを眼目に、当社の専門的な技術やノウハウ、さらには実用新案と特許を元にして若いスタッフが一致協力して作り上げた。非営利的な利用に限って無償で公開する。これから復旧作業に関わる被災地の方々や機関、すでに従事されている方々等に大いに活用していただきたい。なお、導入にあたっては、復旧計画を当方へお知らせいただくとともに、口頭あるいは論文等での発表の際には「東文救復旧システム」であることをクレジットすることを、システム利用の条件にさせて頂く。今回の未曾有の被災状況に鑑み、私企業として培った技術を秘匿すること無く、全てを無償公開している私どもの「思い」をお汲み取りいただき、良識と信義ある活用をお願いしたい。ご不明な点があれば質問にお応えする。また、改良点があれば、ぜひご指摘いただきたい。 (株式会社資料保存器材代表 木部徹)

2011年8月5日金曜日

8月29日の大学図書館問題研究会全国大会オープン・シンポジウムで東文救スタッフが講演します

8月27日(土)~29日(月)に開催される大学図書館問題第42回全国大会(東京)の併催行事オープン・シンポジウム「震災そのとき、その後-震災と図書館について考える」(29日午前開催)で、東京文書救援隊事務局の木部徹が「震災でわかったこと、私たちが役にたてること」(仮題)として、被災資料の救助と復旧に対する東文救の考え方と復旧システムの技術解説、6月からの東北各地への導入実績、そして防災についてお話しします。

オープン・シンポジウム 「震災そのとき、その後-震災と図書館について考える」

2011年8月4日木曜日

遠野文化研究センターに文書復旧システムが導入されました

8月2、3日に岩手県遠野市の遠野文化研究センターに東文救文書復旧システムが導入され、現地での設営とスキル・トレーニングが行われました。「これほど簡単に紙が洗え、早く乾かせて、しかも塩を含んだ紙特有のベタベタ感がなくなったのには驚きました」というお褒めの言葉をいただきました。詳細な報告は後日、当ブログに掲載します。










2011年8月3日水曜日

大船渡市社会福祉協議会から東文救システム導入に対する礼状をいただきました

7月14日、東文救の文書復旧システムが大船渡市Y・S(ユース&シルバー)センターに導入され、復旧作業が進んでいます(参照:日本経済新聞【写真特集:東日本大震災】で大船渡への東文救システムの導入を報道)。

このほど、東文救は大船渡市社会福祉協議会から、このシステムの導入とスキル・トレーニングに対する下記の礼状を頂戴しました。